「アブノーマルラバーズ」
(家田荘子)
郷田の口調が、幾分か柔らかくなったようだ。
「私の女装は、すべて、羞恥心、恥らいが、キーワードになっていて、そこからスタートしてると思ってるんです。女性でも、恥らいのない人は嫌なんです。外国のポルノなんかで『ヘイ、カモン』って感じあるじゃないですか。あんなの、とんでもないと、僕は思うんですね。だから、女性はまず、『いやっ』という言葉からスタートすべきなんです。そこに女の人の美しさというか、まろやかさが存在するわけで、その蓋恥心というのは、女性しか持っていないものなんですよ。女の人は裸を見られたら恥かしいと思うでしょう? 男は思わない。男は何をやっても、女の人の美しさやまろやかさを持つことは無理なんです」
だとしたら、男性である郷田が、女装をするというのは、どんな感情に値するのか。
「頭の中が、その瞬間、女に入れ替わるんです。そして役者になるんです。だから恥らいを感じるんです。その変わる瞬間が楽しみなんです。変わるんだというそのプロセスが、好きなんです。で、変身した後は、『この時間はもうお終い』つてことで、スパッと割り切れるんですよ。それは、男だからでしょうね。女の生理的なものは、終わった後の余韻が長いじゃないですか。男って終わると、ストンと終わっちゃぅんです」
郷田は、冷めたコーヒーを静かにすすった。
喫茶店で取材を終えた私たちは、美咲ちゃんの女装サロンに行った。これからいよいよ、郷田が女装して見せてくれるのた。
マンションのー室は、セーラー服や、ナイトガウンなどの衣装で埋まり、シングルベッドと鏡が置かれている。ここが、プレイルームだ。もうーつの部屋でー人、女装準備をしている郷田を私は、プレイルームで待った。
ただ何もしないで郷田のプレイを見学していては、不公平たと思った私は、そこにかかっていたセーラー服に着替えてみた。くすぐったいような恥かしさと、まだイケるんじゃないかという、妙なツッパリがわいて来た。
「お待たせ....」
低く、甘い声を出して、プレイルームに入って来た郷田を見た瞬間、私は息が止まるかと思った。セミショート・ボブのウィツグをかぶり、しっかり化粧をした郷田が、黒のナイトガウンを来て、下を向いていたのだ。
「どうしたのよ」
サロンのオーナーで、女装・バイセクシュァルの美咲ちゃんが、近づいて行くと、
「恥かしいわ……」
低い声で郷田は、身をよじった。言葉と行動、すべてが、すっかり女性のそれだった。いや、それ以上に色っぽい。郷田は、もう私の存在など、気づいてなかった。
美咲ちゃんと、アルバイトの女性、鈴香さんに手を引っ張られ、郷田はベッドまでやって来た。
「恥かしいわ」
郷田は、さかんに連発する。それを、繰り返すことによって、もっと自分を辱めていくように、私には思えた。
「ねえ、あなた何て名前なの」 美朕ちゃんが尋ねると、
「ミナコよ」
郷田は、かすれた声で言った。会社社長然とした紳士のかけらも、そこにはない。
「ミナコさんって、オッパイが、とっても感じるのよ」
美咲ちゃんが言うと、鈴香さんが、郷田のスケスケナイトガウンを脱がし、乳首を掴んだ。
「ああっ.....」
郷田は、大げさすぎるほど全身をビクビクさせて、高い声を上げた。郷田の乳首は、すぐに大きくなって来た。
鈴香さんが、両手の中で、乳首を弄ぶ。郷田は「恥かしい」と「ああ....」という声を繰り返し発しながら、なまめかしく身をよじり、腰を振り続けた。
「ほら。お姉さん(私のこと)に見られて、恥かしくないの?」
鈴香さんが、私の方を向かせて、わざと郷田の両足を広げさせた。
「あー、ミナコさん、エッチなパンティーはいてるぅ.....」
郷田は、男性自身を後ろの方へ引っ張ってから、黒のスケスケパンティーをはいていたのだ。しかし、そのパンティーもすぐにはがされ、郷田自身が人目にさらされた。
「恥かしいわ」
と言いながらも郷田は、乳首を美咲ちゃんに、角度を増した男性自身を鈴香さんに弄ばれ、悦に入った表情をしている。
「ああ....ああ....」
郷田は咆哮にも似た声を上げ続け、やがておとなしくなった。サロンに静寂が戻ると、郷田はあわてて他の部屋へ消えた。
「アブノーマル・ラバーズ」(家田荘子著) 角川文庫から引用