邦子は浣腸がお好き

俺の手帳の片隅には邦子についてはこうメモしてあった。

女装子:邦子(くにこ)
年齢:29才
服装:OLの通勤着でよく見るようなコンバーティブなスーツ
下着:フロスティブルーのブラと白のショーツガードル
デート場所:池袋北口のラブホテル
彼女の希望:浣腸マニアだ。俺の手によって、我慢するという苦しみを知り、その苦みが烈しければ烈しいほど、その直後の排便行為に洗惚境があることを教えられたわけだ。


 デートする日は邦子には必イチヂク浣腸を用意させる。それも必ず女性店員のいる店で買わせている。まあ、イチヂク浣腸だけでは男モードで買っても、便秘の奴もいるからそんなには不自然ではない。俺はそれにプラスして生理用ナプキンを買わせている。これを買う男はそうはいるはずがない。
 デートの日は前日にメールで指示を出している。
「ホテルに入る前に下着女装で薬局に行きも浣腸とナプキンを買っておくように!!」
 まあ、ここからプレイが始まっているんだけどね。

 この日はイチヂク浣腸を6個買わせておいた。女装した邦子はハンドバックのなかから、浣腸を取り出す。
「箱を取って、袋から出して、テーブルの上に並べてごらん」
 邦子は手を震わせながら命ぜられるまま、イチヂク浣腸を並べた。
 でも、それですぐスカートをめくりあげてショーツを下ろさせて浣腸するほど俺は素人じゃない。
 6個の浣腸を無視するように、邦子とおしゃべりしたり、ビールを注がせたりした。
 そう、じらしているわけ。邦子の視線はチラチラとテーブルの上の浣腸に行くけど、おれは全く気づいてないふりをしている。
 邦子の心の中はブルブル震えていたんしゃないかな。いつ浣腸をされるかという恐怖と、、いつ浣腸をしてくれるかという期待とでね。


「邦子、あみだクジであそぼうか」
「は、はい?」
「アミダを2つ作ってね」
「なにをされるんでか」
「ひとつは下の所に3コ.4コ.5コ.6コと書いてね」
「?」
「もうひとつは5分、10分、15分、20分と書くんだよ」
わけのわからないまま、邦子は2つのアミダクジを作った。
「じゃ、おれが引くぞ。ひとつは今日の浣腸の数さ。もうひとつはお手洗いをガマンする時間だよ」
「え、えっ.......」
 ラブホテルのベッドの上の奇妙な抽選会の結果、浣腸は4コ、ガマンする時間は15分と決まったのである。


「苦しいの、コーイチローさん....」
 邦子は額に脂汗をかいて苦悶している。腕は後ろ手に縛り、足首も浴衣の帯で軽く縛ってある。ということは俺が縛めを解かない限りは邦子は便器で排泄できないということだ。軽いおもらしに備えて、ナプキンを当ててあるけど、あそこが決壊したら、まあ、何の役にも立たないけどね。
「苦しいの、お手洗いに行かせて、コーイチローさん....」
 だが、俺は「まだ駄目。俺を愛しているのなら、あと5分は絶対にガマンしろよな」と命じ、冷ややかに、時計の秒読みをはじめた。
 邦子は目を閉じて苦しさに顔を歪めている。
 苦しいのは当たり前だよね。グリセリン液で括約筋の収斂を促しているのに、それを意志の力で耐えているんだから。秒読みが始まって2分後、邦子はほとんど気も狂わんばかりの状態になってしまった。普通に、息を吸ったり、吐いたりすることが、出来なくなったようだ。薄氷を踏むような感じで、そーっと息を吐き、また刺戟しないように息をそーっと吸い込んでいる。


「コーイチローさん、だめ........」
 蚊の鳴くような声で、邦子は俺に訴える。俺は首をふり、「ガマンするんだよ、いい子だからね」 と冷たく言ってしまう。
 邦子は手足を縛られているので、自分ではどうにも出来ないのである。
 とんでもないアミダクジの罰ゲームだよね。人間の生理と羞恥の限界を試す残酷な「刑罰」といってもいいかもしれない」
「30秒前だよ、もうすこしだからね」
 そういいながら、俺は足の縛りをほどくために、邦子の足の方に鉢を移動させる。
「ああ.....、苦しいぃぃぃぃ」
 邦子は、泣きだしそうな顔になる。
 

俺は冷たく
「声が出せる間は、まだ大丈夫。いよいよになったら、息をとめて、声も出せなくなってしまうからね」
といって、ストッキングに包まれた足の裏をくすぐったり、太腿を撫でたりしている。
「ああ、もうだめですぅ....。洩れちゃう!!」
「いえいえ、まだ大丈夫....」
「あっ...、だめです、だめです....」
「大丈夫だってば。大げさなんだから.......」
 気分を紛らわすために、邦子のヒップにスリッパでスパンキングを10発くらいプレゼントした。パーンという乾いた音がラブホテルの寝室に響いた。
「ああ....」
「そろそろ、かなぁ?」
「あっ.........」
「いま、足をほどいてあげるからね」
「は、は、はやくぅ........」
「もうすぐだよ.....」
「アッ、アッ・アッ......」
「ふふ。大袈裟じゃないかな、邦子クン」


 俺は笑いながら、愉しそうに彼女の足首をほどいたが、邦子は手を縛られたまま、大急ぎでトイレに駆け込んだのだった。縛られた手で必死でスカートをめくりあげ、パンティストッキングとショーツをなんとか下ろすと、トイレのドアを閉めるのも忘れて邦子は便器に腰掛けた。一瞬の後、緊張感が吹き飛び、同時にたとえようもない解放感と、おもわず「いい気持ち....」とつぶやくほどの快感が邦子を支配したようだ。
 これだから浣腸はやめられないはずだよね。

                                          <おわり>

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