女の復讐マニュアル
いいか、男前なんか信じたらあかんで、絶対に信じたらあかん。男前にろくな男はいてへん。「色男、金と力はなかりけり」って昔の人は言うたもんやけど、それってほんまやわ、当たってるわ。
ええ顔してる男って、やっぱり金も力もあらへんやつが多いもん。そやから、男前の男たちはブスを狙うねん。ブスは男に飢えてるから、簡単にやらせてくれる、男に尽くしまくる、ってそう信じ込んでるんや。
自慢やないけど、私はブスや。それもものすごいブスや。何系のブスかって聞かれてら、そうやねえ、下駄にゴリラの顔を書いたような、ゴッゴツ系のいかついブス。こんな顔してろから、もちろん男もおらん。かつてー度もおらんかった。
そやけど、こんな私に目を付けたんがマサアキやった。マサアキはメチャメチャ男前やで。目はばっちりで、外人さんみたいに鼻筋は過ってて、口元きりっと引きしまっている。背も高いかち、初めて見た時はどこかのモデルか何かかなあって思たぐらいや。
付き合い始めた頃は、何でマサアキは私みたいなブスを好きになってんやろうって疑問を持ってた。けど、マサアキが今まで付き合ってた女の写真を見せてもらへた時、その子らがみんな私のように、えげつない顔した醜女やったかし、そうかマサアキは女を顔で選ばんと心で選んでるんやわって安心したんや。この子は自分が男前やのに、女を外見で判断せいへんねんから、なんてええ子やねんやろうって、私はマサアキのことを大感心しとった。そやけど、付き合いは長く続けへんかった。マサアキは私からお金をせびりまくって(せこいようやけど、合計二十三万七千四百五十ニ円の貸しになってる)、私とやるだけやって、そんで、「ほな、さいなら」ってどっか行ってもたこその後、私はお金を返してもらおうと思って、マサアキの親友とかいうやつを探し出して、あいつの居所を聞いたけど、そいつはしらばっくれて「知らん」のー点張り。私は口惜しいなって、そいつの襟首掴んで、体を思いきり揺すったら、
「また、新しいブスでも見つけたんちやぅんか。マサはブス専やから。ブスやったら何でも言うこと聞きよる、金もバンバン貸してくれよる、一ぺんブスと付き合うたらもうニ度と普通の女とは付き合われへんって、マサが言うとったぞ」
と、そいつは醜い私を嘲笑うようにしてそう言いよった。
ブス専って、ブスを専門に好むってことやる。何やのよ、どういうことやのよ。ブスやったら利用してもええってことか。ブスはそれだけで負い目があるから、男に対して言いなりでおるとても思うてんのか。
むかついた。とにかく、メチャ腹が立った。経済力もない。ちっともしゃきっとしたところがない、ただ顔がええだけの男やないの。そんな男はな、ちっともモテへん。並みの女でもそんなせこい男なんか相手にせいへんのに、ましてや美人なんか目もくれへん。マサアキみたいな無知で無能の男はせいぜいブスにやさしくして、自分の存在意義を保っていくしかあらへんのに。それをええ気になって、ブスを利用しやがって。
私はこの口惜しさを従兄弟のヒデヒコに訴えた。子供の頃次々と両親を亡くしたヒデヒコは、私の親に引き取られて、十五までうちにおったから、私とは実の姉弟のようや。姉の怒りを知って、弟は絶対復讐したるって言うてくれた。
中学を出たあと、ヒデヒコは職を転々とし、今現在はニューハーフの店に出てる。胸はホルモン剤で女のオッバイみたいになってるけど、下半身はまだ男のまま。身も心も全て女になりたいと思っているから、もうすぐシンガポールで下の方の手術をする予定になってたけど、私のためにそれを少し延期することにしてくれやった。
ヒデヒコはすごい美人やねん。美し過ぎて、こっちは嫉妬もせいへん。とにかく芸術的な美しさやから、街を歩いてても、金持ちそうなおっちゃんしか声掛けてけいへん。そこらへんの男やったち絶対に相手にしてもらわれへんような、そんな気品も備えてる。
そのヒデヒコがマサアキ行き付けの店を突き止めて、そこに現れたマサアキに声を掛けた。超べっびんさんに誘われてマサアキは天にも昇ったような気分になりやった。そのままニ人はホテルへ直行や。
ホテルの部屋に入って、二人でやらしいこと始めたんやけど、いざって時になって、つまりは下半身を曝け出した時に、マサアキはヒデヒコのナニを見て、愕然としたんや。なんと、こんな美人に俺と同じもんが付いてるやないかってことで。
こら男や、騙されたって気付いたマサアキは慌てて衣服を着け出したけども、それでヒデヒコが許すわけないやんか。大事な大事なお姉ちゃんがえらい目に遭わされたんやから、たっぷりとお返しさせてもらおうって思うてやる。
マサアキは腕力弱いやろ。けど、ヒデヒコは顔がきれいのに、すごい力持ちやねん。ミスター・レディの中でも一番腕相撲が強いって自慢してやったわ。そのヒデヒコが、逃げるマサアキの腕を掴んで無理矢理ベッドに押し倒し、四つん這いにさせて、後ろからやってまいやった。「止めてくれ、止めてくれ」ってマサアキは抵抗したけど、何せ色男やから力があらへん。バックから攻めるヒデヒコはビクともせいへん。
結局、マサアキはその夜のうちに八回もカマを掘られてまいやったた。全てが終わったあと、マサアキの肛門は見るも無惨、真っ赤にただれてたちしい。
「あんた相当無茶してんなあ」
って、ヒデヒコに言うたら、ヒデヒコは何て答えたと思う?
「もうすぐ下の手術するやろ、これで使い納めから思たら、何やセンチメンタルな気持ちになってもてな。そやから、この際とことん使い果たしたろう思て。ほんだら、えらいはりきってもたわ。ちょっとやり過ぎたみたいやな」
こう言うて、照れ笑いしやった。
それにしても、未知なる味っていうもんは、はまったら癖になるもんやねえ。ヒデヒコにあれを数わったマサアキはその後、あっちの方の道を選んだようやで。バックの気持ち良さを知ったら、もうニ度と女とはエッチがでけんらしいで。男を求めて夜な夜なその筋の店に出没してるらしいけど、私の復讐のお陰で新しい快楽と巡り合うことができてんから、この復讐はひょっとして失敗やったかもしれへんな。口惜しい気もするなあ。
けど、まあ、それでもぇぇわ。とにかく、あの夜、マサアキはヒデヒコに犯されてヒーヒーと苦しんでんから。目に涙をいっぱい溜めてやったらしいし。それを聞いて、私の気持ちも少しは晴れた。しゃあない、今回はこれぐらいにしといたるわ。
「女の復讐マニュアル」(復讐研究会著)データハウス刊から引用